【オーシャン・カレント No.229】食品ロス削減の日(10月30日)

(消費者庁HPより)

「豆知識」欄でも紹介したように、食料関連産業(食品製造業、流通業、外食産業等)が発展し食品流通が広域化するなかで、年間600万トンという膨大な食品ロスが発生しています。
 このようななか、農林水産省は去る10月30日の「食品ロス削減の日」に合わせて、食品ロス削減や食品リサイクルなど商慣習見直しに取り組む事業者の取組を募集し公表しました。このなかでは、いわゆる「3分の1ルール」(賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例)の見直しや賞味期限表示の大括り化に取り組む事業者が増えている状況がみられます。

 一方、食品ロス削減のためには事業者のみならず消費者の取組みも重要です。例えば、消費者庁が中心となって、商品棚の手前にある商品を選ぶ「てまえどり」を呼びかけるキャンペーン等を行っています。

 ちなみにゴミ清掃員でお笑い芸人である滝沢秀一さんは、「消費者は100円の大根を買う時には1円でも安くと気にする一方で、腐らせて半分(50円分)捨てたりしている」等と話しています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.228】石川敏之さん(ゆっくり農縁、東京・あきるの市)

石川敏之さんは神奈川県のご出身。
 生協で食品関係の業務に携わられているうち、次第にスローライフに魅了されるようになり、ブータン旅行をきっかけに早期退職され、当時住んでおられた東京・八王子市を中心に、様々な市民活動に参画されるようになりました。
 活動内容は、伝統野菜の普及、映画の自主上映、市民エネルギーなど幅広いものでした。

そのうちに石川さんは自らも農業生産者になりたいとの思いが強くなり、多摩地方を中心に農地を探した結果、4年ほど前、東京・あきる野市に「ゆっくり農縁」を開園されたのです。
 JR武蔵増戸駅から徒歩10分弱、住宅に囲まれた400坪ほどの農園では、農薬や化学肥料は使用しない、極力、人の手を加えないという「自然農法」で、野菜やハーブを栽培されています。多くは固定種(伝統的に継承されてきた種)です。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.227】国連食料システムサミット

写真は国連HPより。https://www.un.org/en/food-systems-summit/about

去る2021年9月23日(木)〜24日(金)の2日間、国連食料システムサミットがオンラインで開催されました。これは、SDGsの達成に向けて、グテーレス国連事務総長の呼びかけにより初めて開催されたもので、世界の150か国以上の首脳・閣僚のほか、趣旨に賛同した多くの民間企業・団体等が参加しました。
 日本の菅首相からは、「みどりの食料システム戦略」を通じて持続可能な食料システムの構築を進めていく等のコミットメントがなされました。

これらを踏まえて議長から発出された「共同宣言」では、飢餓の撲滅と栄養の確保、環境と調和した農業の推進、透明性のある貿易ルール、パンデミック下でのサプライチェーンの強靭化等が強調されています。
 これらの課題について多くの関係国・関係者の間で合意形成がなされたことには大きな意義がありますが、一方で、今回のサミットには大企業の関与が強くなっていること等を理由として、GNOや市民団体の多くが参加をボイコットしました。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.226】森 歩(もり・あゆみ)さん

(写真は森さんのフェイスブックより)

森さんは東京都のご出身。
 外国人相手の日本語教師をしながら、『東北食べる通信』の縁で知り合った岩手の漁師さんのお手伝いに通ったり、わかめを東京・高円寺のマルシェで販売したり、という活動をされていましたが、本年4月、兵庫・但馬(たじま)の豊岡市に移住されました。
 但馬は兵庫県北部の日本海側に位置し、豊岡市はコウノトリや2019年に劇作家の平田オリザさんが主宰する劇団とともに移転された地として有名です。

森さんが就職したのは但馬漁協(JF但馬)。漁協とは漁業者からなる協同組合で、森さんは新製品の企画やオンラインショップの運営等を担当されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.225】ポケマル「産直アプリを通じた関係人口創出に関する調査」

((株)ポケットマルシェ プレスリリース(2021.8)より)

2016年9月にスタートしたポケットマルシェ(ポケマル)は、生産者と消費者をつなぐ産直アプリ。メッセンジャー機能等を使った直接的なコミュニケーションも可能で、現在、約5,700名の生産者と35万名の消費者が登録しているとのこと。

このアプリを運営する(株)ポケットマルシェ(岩手・花巻市、高橋博之代表)は、ポケマル登録ユーザのうち5,600名を対象として、関係人口創出に関する実態調査を実施・公表しました。

調査結果によると、生産者と仲の良い(販売・発送以外のやりとりをしている)ユーザの71%が生産者のいる地域を訪れたいと回答しており、実際に100名以上が生産の現場を訪問しているとのこと。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.224】IPCC(第I作業部会)第6次評価報告書

環境省「政策決定者向け要約(SPM)の概要」より(http://www.env.go.jp/press/109850/116628.pdf

去る8月9日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書のうち第1作業部会の報告(自然科学的根拠)が公表されました。
 8年ぶりとなった今回の報告書の内容は、これまでの方向性と大きく変わらないものの、その方向性がより確実なものとなったと分析しています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.223】700万トンを割り込む米生産量

図の出典:農林水産省「米をめぐる関係資料」(2020.7) p.5
 https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-480.pdf

農林水産省によると、本年の全国の主食用米の作付面積は、前年に比べて約6.2〜6.5万haの減少が見込まれているとのこと。
 これは前年の作付面積の5%程度に当たり、仮に今年の米生産が平年並みの作柄となれば、主食用米の生産量は700万トンを下回るものと見通されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.222】故・杉本苑子さんの1964東京五輪開会式

作家の故・杉本苑子さんは、1964年の東京五輪開会式に参加して次のような文を残しておられます(抄録)。

「二十年前のやはり十月、同じ競技場に私はいた。女子学生のひとりであった。出征してゆく学徒兵たちを秋雨のグラウンドに立って見送ったのである。
 私たちは泣きながら、征く人々の行進に添って走った。髪もからだもぬれていたが、寒さは感じなかった。おさない、純な感動に燃えきっていたのである」

「オリンピックの開会式の興奮に埋まりながら、出陣学徒壮行会の日の記憶が、いやおうなくよみがえってくるのを、私は押えることができなかった。
 同じ若人の祭典、同じ君が代、同じ日の丸でいながら、何という意味の違いであろうか。」… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.221】肉食は地球環境を破壊するのか

令和3年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(p.81)

地球環境問題への意識が高まる中、できるだけ肉食は避けるべきとする議論があります。
 令和3年版環境白書(p.81)によると、世界の食料部門 (生産、加工、流通、消費等) における温室効果ガスの発生量は全体の21~37%を占め、さらに日本人の食事のカーボンフットプリントのなかで肉類及び乳製品は約1/3を占めているとのこと。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.220】令和3年版 首都圏白書

国土交通省「令和3年版 首都圏白書」要旨 p.15より

2021年6月15日(火)、令和3(1991)年版の首都圏白書(首都圏整備に関する年次報告)が閣議決定されました。
 本白書では、人口10万人当たりの当たりの感染者数が多いなど、首都圏は感染症の流行というリスクが相対的に大きいことが明記されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.219】食と農の市民談話会

 https://www.shiminkagaku.org/agrifoodmeetings/

前号でも案内しましたが、スタートした「食農市民談話会」を改めて紹介します。
 日本の食や一次産業が抱えている様々な課題を「自分ゴト」とするための談話会で、月1回、6回にわたりオンライン開催します。企画と進行は中田が担当しています。
 去る6月 8日(火)には、小谷あゆみさん(農業ジャーナリスト、ベジアナ)から、「1億農ライフ〜都市のわたし達による食の革命」と題して、興味深く楽しくてパワフルな話題提供を頂き、参加者間での対話も盛り上がりました。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.218】小谷あゆみさん(ベジアナ、農ジャーナリスト)

(写真は小谷あゆみさんのフェイスブックページより)

小谷あゆみさんは、野菜をつくるフリーアナウンサー(ベジアナ)、農ジャーナリスト。
 兵庫・尼崎市生まれ、高知県黒潮町出身。石川県のテレビ局のアナウンサーとして活躍された後フリーに。NHK「ハートネットTV〜介護百人一首」の司会を毒蝮三太夫氏と務められるなど、多くのテレビ・ラジオ番組に出演されています。
 また、ご自身も世田谷区の体験農園で野菜をつくりながら、全国各地の農山村を取材し、農業専門紙の連載やご自身の動画などを通じて積極的に情報発信されています。農林水産省の審議会委員等も務められています。

小谷さんが提唱されているのは「1億農ライフ」。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.217】地域づくり情報誌『かがり火』

『かがり火』は、合同会社かがり火が発行する「地域づくりに情熱を燃やす面白人間や“変”差値人間を紹介する人間情報誌」です。
 1987年の創刊以来、地域活性化に向けてのヒントやノウハウを満載して、隔月で刊行されてきました。

発行人・編集者の菅原歓一さんは、大学卒業後にいったん就職した大手出版社を退職し自ら起業。全国各地の「無名・有名の面白人間」を訪ね、その地の気候や風土を体験しつつ、直接対面して話を聞き、記事にまとめて発信してこられました。
 取材先に泊めてもらい、寝食を共にすることも多かったそうです。

地域活性化に限らず、ノウハウやコツといったものは明文化・マニュアル化することが困難な「暗黙知」に属するものです(「ほんのさわり」欄参照)。『かがり火』の記事がリアルなのは、菅原さんご自身の体験取材に基づいているためです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.216】巻き寿司やさん(東京・八王子市)

−巻き寿司やさん(東京・八王子市)−
 https://www.yahatameikomaki.com/

本メルマガNo.160でも紹介させて頂いた八幡名子さん(やはた・めいこさん、映像作家、巻き寿司大使、飾り巻き寿司1級インストラクター)が、本年1月、月1日のテイクアウト専門の巻き寿司店をオープンされました。
 その名も、巻き寿司やさん。

 これまでも「食べる通信」や「ポケットマルシェ」を通じて出会った全国の農家や漁師さん、あるいは地元の伝統野菜の生産者の方たちの食材を伝える活動を続けてこられた名子さんが、ついにその拠点を構えられたのです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.215】輸入小麦の政府売渡価格の改定(値上げ)

(農林水産省HPより)

米と並ぶ主要食糧である小麦は、需要量の9割を輸入に依存しているため、政府が自ら計画的に輸入すること(国家貿易)により安定供給を図っています。
 輸入小麦の政府から民間への売渡価格については、国際相場の変動の影響を緩和するため、6ヶ月間の平均買付価格をベースに算定し、年2回改訂を行っています。

小麦の国際価格は、最近、米国・カナダ産小麦に対する中国の旺盛な買付け、2月中旬の米国中央部の寒波による小麦生育への影響懸念などにより上昇しています。このため、2021年4月からの輸入小麦の政府売渡価格は、前期に比べて5.5%引上げられました。
 物価や家計への影響は限定的と考えられていますが、大手製粉メーカー等は製品の値上げを発表しています。… 続きを読む