【メルマガ】F.M.Letter No.185

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.185◇
 2020年1月25日(土)[和暦 睦月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識  現在の地域に移住した理由
◆ O.カレント  NPO 高田暮舎(岩手・陸前高田市)
◆ ほんのさわり 筒井一伸ほか『移住者による継業』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 和暦でも新年を迎えました。皆様にとって平穏で稔り豊かな年でありますよう。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号では移住について考えてみました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/ 

-農山村地域に移住した理由-

日本の人口が減少局面に転じる中、人口の東京への一極集中は続き「地方消滅」といった言葉がある一方で、近年、若い世代を中心に都市部から過疎地域等の農山漁村へ移住する「田園回帰」の動きが強まっています。

 総務省は、2017年11月から12月にかけての約1ヶ月の間に、実際に過疎関係市町村 (672市町村)に転居した人 (4,362名)を対象に、移住の背景や理由についてアンケート調査を行いました(回答数1,000)。
 回答者は男女ほぼ同数で、20代から40代が全体の67%を占めています。
 リンク先の図185は、地域の魅力や農山漁村地域への関心が移住に影響したと回答した人(全体の27.4%)を対象に、移住理由を聞いたものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2020/01/185_ijuu.pdf

 これによると「気候や自然環境に恵まれたところで暮らしたいと思ったから」が47.4%と最も多く、次いで「それまでの働き方や暮らし方を変えたかったから」が30.3%、「都会の喧騒を離れて静かなところで暮らしたかったから」が27.4%等と続いています。

 性別にみると、男性は「ふるさと(出身地)で暮らしたいと思ったから」が比較的多いのに対して、女性は「それまでの働き方や暮らし方を変えたいと思ったから」という理由が相対的に多くなっています。

 総務省は、「農山村地域が有する価値については、従来から食料生産や環境保全等の公益的機能が挙げられることが多いが、これらに加えて『自分らしく暮らし、働く場』としての価値がある」と分析しています。

[資料]
 総務省「過疎地域への移住者に対するアンケート調査」
 https://www.soumu.go.jp/main_content/000529976.pdf 

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/ 

-NPO 高田暮舎(岩手・陸前高田市)-

岩手県の東南端、宮城県に接する陸前高田市は、東日本大震災の津波で大きな被害を蒙りました。
 震災直後から多くのボランティア等が入り、なかにはやがてリピーターとなり、あるいは移住された方もいます。

 そのような陸前高田市において、2017年5月、特定非営利活動法人 高田暮舎(たかたくらししゃ)が誕生しました。設立に関わったのは、震災後に都会からUターン、Iターンした若い方達が中心です。

 掲げるミッションは「ポジティブな過疎地を創る!」。
 日本全体が人口減少社会に移行するなか、過疎だからこそできる取組みを行い、新しい町を創り出していくこと。

 具体的な活動の一つが、陸前高田市から受託して運営しているポータルサイト「高田暮らし」です。
 このサイトによると、陸前高田市に移住定住する(高田人になる)プロセスは、まずは陸前高田の事を「知る」、次に「行ってみる」、そして「仕事を探し」「家を見つける」。
 高田暮舎では、この一連のプロセスに沿った情報提供と、一元的な相談窓口の業務を行っています。都会で暮らし働いた経験があるUターン、Iターン者ならではの的確なアドバイスができる面もあるようです。

 陸前高田市では、昨(2019)年9月、国営の東日本大震災津波伝承館がオープン。近隣にはユースホステル等の震災遺構のほか、有名な「奇跡の一本松」もモニュメントとして残されています。
 東日本大震災から間もなく丸9年を迎えます。
 津波の爪痕が残る一方で新しいユニークな活動が始まっている陸前高田市を訪ねてみませんか。

[参考]高田暮らし
 https://takatakurashi.jp/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらに掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

-筒井一伸、尾原浩子『移住者による継業-農山村をつなぐバトンリレー』(2018.4、筑波書房(JC総研ブックレットno.22))-
 http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_81190535/ 

著者は鳥取大・地域学部教授と同非常勤講師(日本農業新聞記者)。第34回農業ジャーナリスト賞(2018年)を受賞しています。

 農山村では、農林水産業のみならず地域のなりわいの後継者の不足が深刻化している一方で、農山村への移住を希望する「田園回帰」の動きが活発となっています。

 このようななか、これまで世襲で行われてきた地域のなりわいを移住者などの第三者が継ぐ「継業」(バトンリレー)が、各地の農山村で広まっています。
 なお、継業は地域との関わりが大きいという面で、単なる事業承継や経営継承とは区別されるとのこと。

 継業には、起業に比べて初期投資の抑制、それまでの顧客を引き継げるなど多くのメリットがあります。また、移住者等の新しい視点や価値観に基づく革新性も備えているそうです。

 本書では、そのような4つの事例が詳しく紹介されています。
 岐阜・郡上市明宝地区では、農家等の協同組合が経営していたキャンプ場が高齢化と後継者不在により存続が危ぶまれていました。そこで、行政や商工会等が仲介・支援することで、滋賀県出身の男性が継業し、ネット等を積極的に活用して運営しているそうです。
 高知・香美市香北町のある地区に唯一あった商店も廃業の危機にありましたが、何とか存続させたいという地域の方達の思いもあり、高知市出身の夫妻が継業することとなりました。新たに食堂も始め、地域の社交場となっている様子が紹介されています。
 また、地域おこし協力隊だった男性が地元の豆腐店を継業した事例(新潟・小千谷市真人地区)、祖父母の糀(こうじ)店を孫が移住して継業した事例(千葉・鴨川市)も紹介されています。

 本書では継業を、後継者不足など農山村に共通する課題に対する一つの解決方法であると同時に、地域のなりわいを地域全体の資源・宝として捉えなおして存続させる「地域づくりの新しい挑戦」と位置づけています。

◆ 情報ひろば  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

 ▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 石井一也先生「ガンディー思想と現代」(脱成長MTG)[1/10]
 https://food-mileage.jp/2020/01/10/blog-247/

○「初舞台」を飲む会@ちよだいちば(東京・神田)[1/13]
 https://food-mileage.jp/2020/01/13/blog-248/

○「空が青いから白をえらんだのです」ライブ&トーク(東京・池袋)[1/17]
 https://food-mileage.jp/2020/01/17/blog-249/

○ Re:来人 岩手・陸前高田ツアー(1、2日目)[1/18、19]
 https://food-mileage.jp/2020/01/18/blog-250/
 https://food-mileage.jp/2020/01/19/blog-251/

○「銀座農業コミュニティ塾」第13回勉強会[1/22]
 https://food-mileage.jp/2020/01/22/blog-252/

○ 日米CSAの課題とこれから(霞ヶ関ばたけ)[1/24]
 https://food-mileage.jp/2020/01/24/blog-253/  

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 限界集落の災害対応から学ぶ地域づくり
 日時:1月30日(木)19:00~21:00
 場所:アーツ千代田3331(東京・外神田)
 主催:Fw:東北 Fan Meeting
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.fwtohoku.com/event/vol-20/

○ 江戸東京野菜をご存知ですか?
 ~一つひとつの歴史を感じ味わいましょう~
 日時:1月31日(金)12:00~14:30
 場所:渋谷エクセルホテル東急(東京・渋谷区道玄坂)
 主催:CSまちデザイン
 (詳細、お問合せ先等↓)
 http://cs-machi.com/?p=4563

○ 有機農業:提携、CSAの原点と今
 -『大平農園401年目の四季』上映とシンポジウム-
 日時:2月8日(土)10:30~17:00
 場所:國學院大學(東京・渋谷区東)
 主催:提携フォーラム & 第9回CSA研究会
 (詳細、お問合せ先等↓)
 http://csa-net.sakura.ne.jp/wp/2020/01/11/ 

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「困っている外国人観光客を見掛けたら、できる範囲で手助けしてあげましょう」
「小さな親切(春節)ですね」

 コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.186は2月8日(土)[和暦 睦月十五日]に配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
 http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也
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