【オーシャン・カレント279】2023年産の米について

【ポイント】
 本年産の米は作況指数(量)は平年並みながら、一等比率(質)は大きく低下。地域による差も大。

先日、農林水産省が公表した10月25日現在の米の作況指数(平年の単収に対する比率)は、全国では101と「平年並み」となりました。しかしながら地域別にみると、北海道(104)、宮城(105)など「やや良」となっている都道府県がある一方、秋田(97)、新潟(95)、愛知(96)、鳥取(95)など7県は「やや不良」となっています。

一方、9月30日現在の米の検査結果によると、一等の比率は、昨年産は75.8%であったのが本年産は59.6%と16ポイント以上の大きな低下を示しています。これは地域別の差がさらに大きく、特に新潟県では13.5%と、昨年産の74.4%から61ポイント低下しています(秋田県、山形県、神奈川県でも30ポイント以上の低下)。これは、梅雨明け以降、記録的な高温で推移するとともに降水量が乏しかったことから、大量の白未熟粒等が発生したためです。
 白未熟粒とは、米粒にでんぷんが十分に詰まらず隙間ができたため、光を乱反射して白く見えるもので、水加減を少なめにして炊くなど工夫すれば味は変わらないものの、農家の収入は大きく減少することとなります。… 続きを読む

【オーシャンカレント278】JEI エシカル基準

JEIホームページより(一部)

これは、先日のご講演(霞が関ばたけ)のなかで、山本謙治さん(農畜産物流通コンサルタント)が紹介されていたものです。
 「エシカル」(倫理、良心)をキーワードに地球の環境と社会との調和を目指して、2017年に設立された日本エシカル推進協議会(JIE)は、2年間の各分野の専門家による検討やパブリックコメントを経て、2021年、日本初のエシカル基準を策定し公表しました。
 この基準は、商品やサービス、あるいはブランドや企業のエシカル度を客観的に示すためのモノサシで、8つの分野(大項目)についてそれぞれ4〜7つの課題(中項目)が設けられており、全体で43の項目から構成されています。

8つの大項目(かっこ内は中項目の数)は、自然環境の保護(7)、人権の尊重(5)、消費者の尊重(4)、動物の福祉・権利の保護(6)、情報開示(5)、地域社会への配慮・貢献(5)、適正な経営(7)、サプライヤーやステークホルダーと積極的な協働(4)となっています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント277】食品ロス削減月間

(消費者庁HPより)

1989年10月1日施行された食品ロス削減推進法において、毎年10月は「食品ロス削減月間」、10月30日は「食品ロス削減の日」と定められています。これを受けて、消費者庁、農林水産省、環境省は連携して、食品ロスの削減に向けた集中的な普及・啓発に取り組んでいます。

具体的には、アンバサダーを起用した啓発ポスターの作成と配布、食品ロス削減全国大会の開催(10月30日(月)、金沢市)、コンビニエンスストアでの「てまえどり」の呼びかけ、食品ロス削減推進表彰受賞者の表彰、商慣習の見直しやフードバンク等への食品提供に取り組む食品事業者や、消費者啓発に取り組む事業者・地方自治体の募集等に取り組んでいます。
 また、「めざせ!食品ロス・ゼロ」川柳コンテストの募集も行われています。ちなみに昨年の受賞作は「日本から世界に広がれ『もったいない』」。(私も応募しました!)

このように行政は様々な普及・啓発に取り組んでいますが、実際に食品ロスが削減できるかどうかは、一人ひとりの意識と行動にかかっていることは言うまでもありません。… 続きを読む

【オーシャン・カレント275】車座座談会

2023.9/14(木), 東京・京橋にて

車座座談会とは、全国の一次産業の現場を歩かれている高橋博之さん((株)雨風太陽)を囲み、参加者が車座(つまり全員が主役)になって、現代社会の様々な課題やビジョンについて語り合う会です。組織的に開催されているものではなく、高橋さんの理念に賛同するボランティアの方たちによる自主的な取組みで、これまで全国で1300回近く開催されています。
 『食べる通信』や『ポケマル』で、食の分野で生産者と消費者をつなぐ活動に尽力されてきた高橋さんの話は、消費者にとって、遠くなってしまった一次産業の現場をいかに身近に感じることができるかが柱の一つとなっています。

先日(9月7日(木))には、東京・京橋で、約20名の参加者が集い、第1280回目の車座座談会が開催されました。… 続きを読む

【オーシャン・カレント274】家庭備蓄ポータル(農水省HP)

各地で大規模な災害が頻発するなか、食品の家庭備蓄の一層の普及を図ることを目的として様々な情報を集約したポータルサイトです。
 掲載されている「災害時に備えた食品ストックガイド」には、最低3日〜1週間分の備蓄が望ましいとしており、例えば1週間分・大人2人の場合、米は2kg×2袋、カップめん類6個、缶詰18缶等のほか、たまねぎ・じゃがいも等の日持ちする野菜類、煮干し・のり・乾燥わかめ等が例示されています。
 また、要配慮者(乳幼児、高齢者、慢性疾患・食物アレルギーの方)向け、単身者向けのガイドも公開されています。

本ガイドでは、ローリングストック(好みの食品を普段から多めに買い置きし、賞味期限の近いものから順次消費すること)等により、日常の一部として無理なく楽しみながら備蓄していくことの重要性が強調されていますが、1週間分の備蓄食料を日頃から備えることは簡単ではないことが分かります。
 しかし、東京圏への人口等の一極集中が進むなかで首都直下地震が想定される現在、少なくとも東京圏の居住者にとっては、家庭での食料備蓄は欠かせないものと思われます。… 続きを読む

【オーシャン・カレント273】スプーン(平和祈念展示資料館)

去る8月13日(日)、東京・新宿にある平和祈念展示資料館を初めて訪ねてみました。
 企画展「43人が描く空想未来漫画『2100年8月15日』」と、漫画を描くワークショップが開催中(10月1日まで)で、小さな子どもを連れた家族連れ等が多数来場していました。
 シベリアの収容所で乏しい黒パンを切り分けている場面を描いたジオラマは、抑留者たち全員の目がその手元を見つめています。来場者の男の子も、真剣な表情で眺めていました。

特に印象に残ったのが、数多くのスプーンなど食器の展示でした。
 抑留者たちは、いつの日か故郷に帰り、腹いっぱい食べることを信じて食器を手作りすることで、明日への生きる望みをつないでいたそうです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント272】NPO法人ユメソダテ(東京・世田谷区)

2018年に設立されたユメソダテの理念は、社会がユメ(夢)を育て、ユメが人を育て、人が社会を照らす循環づくりです。
 知的・発達障がいのある方(当事者)の認知発達を促すフォイヤーシュタイン教材やブレインジム(体操)の体験会、障がいのある方のための「お買い物体験講座」、千葉大学とコラボしてのニコニコみかんソースの製造・販売など、幅広い活動をされています。
 また、2022年10月に開園した夢育て農園(世田谷区)では、障がいのある方々を対象に、畑作業をしながら認知・身体機能を高める「人を育てる畑コース」を設け、毎週木曜日には支援者の方々とともに認知身体発達の取組みと併せて畑作業を行っています。また、順天堂大学等と連携し、畑作業等が心身の状態を改善していることについてのエビデンスの収集・発表も行っています。

理事長の前川哲弥さんは1962年生まれ。農林水産省、経済協力開発機構(OECD)勤務を経て、現在は家業の精密機器運送業を営みつつNPO活動に勤しんでおられます。
 知的障がいのあるご子息の将来の自立に不安を感じていた前川さんは、障がいのある当事者の方々にお話を伺ったそうです。すると、何人かの方が「ユメ」(希望、目標など)を生き生きと語られたとのこと。「社会がユメを育て、ユメが人を育てる」ことに気づき、仲間とともにNPOを立ち上げたのだそうです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント271】通潤橋(熊本・山都町)

通潤橋と白糸台地の棚田(筆者撮影、2023.,4/9, 22.3/27)

通潤橋(つうじゅんきょう)は、熊本県のほぼ中央、山都町(やまとちょう)にある日本最大級の石造りアーチ橋で、豪快な放水などで観光スポットとしても有名です。
 実は、この橋は道路ではありません。通潤用水と呼ばれる農業用水路の重要な部分を構成する「水路橋」で、橋の内部には農業用水を通すための頑丈な石管が設けられています。

緑川等が削り取った深い谷に囲まれた白糸台地は、永く水や食料の不足に悩まされてきました。幕末近くの嘉永年間、惣庄屋の布田保之助(ふた・やすのすけ)は、その白糸台地に農業・生活用水を供給するための用水路の建設を熊本藩に申し出ます。当時の熊本藩は行財政改革を進めており、大規模な土木工事も地方・民間に移譲していたのです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント270】今関麻子さん(農家支援キッチンカー“eat for”)

写真は2023.6/17、東京・麹町にて。

今関麻子(いまぜき・あさこ)さんは千葉市のご出身。小学生の頃から環境や食の問題に関心があり、千葉大学食料資源経済学科在学中には、仲間と学生居酒屋「あるばか」を共同出資でオープンされました(私も何度か伺いました。今関さん達の卒業後も何代か続いていましたが、残念ながら2019年に閉店)。

卒業後、生協での品質管理業務や食育プログラムを扱うヘルスケア等に携わっておられましたが、2019年、台風19号により生産者が大きな被害を受けた様子を目にして「いま行動しなければ」と決意し、翌年、「食べることが社会貢献に。」をコンセプトとする農家支援キッチンカー“eat for”を起業されたのです。

現在、東京を中心に、自然災害等で市場に出荷できなくなった規格外野菜等を使ったメニューを提供されています(出店スケジュール、メニュー等は添付を参照)。一食につき5円のほか、車体広告の掲載料が生産者に寄付されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント266】オーガニックビレッジ

農林水産省HP「オーガニックビレッジ」のページより。

オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず事業者や地域内外の住民を巻き込んだ地域ぐるみの取組みを進める市町村のことです。
 農林水産省は「みどり戦略」を踏まえ、2021年度補正予算から交付金による支援を開始し、2025年までに100市町村で先進的なモデル地区「オーガニックビレッジ」を創出することとしています。… 続きを読む