【オーシャン・カレント】国連WFP「ハンガーマップ」

「ハンガーマップ」は世界の飢餓の現状を分かりやすく示した世界地図で、世界最大の食料支援機関である国連世界食糧計画(WFP)が毎年作成しているものです(最新版は2021年のもの)。

全人口に占める栄養不足人口の割合(2018〜20年平均)が色分けして示されており、人口の35%以上が栄養不足という濃い赤色に塗られている国は、コンゴ民主共和国、中央アフリカ、ソマリア、マダガスカルなど中央/東アフリカに集中していることが一目でわかります。
 また、イラク、イエメン、北朝鮮も濃い赤色で塗られています。

ハンガーマップは、以下の国連WFCのホームページ(日本語)からダウンロードできます。私もA4版で印刷し、居室の鏡の隣りに貼って毎朝眺めています。

(参考)国連WFP「ハンガーマップ2021」… 続きを読む

【オーシャン・カレント】松郷開拓地(埼玉・所沢市)

(2022.8/8、筆者撮影)

戦後の深刻な食料不足に対処するため、政府は全国各地で緊急に開拓事業を実施することとなりました。
 筆者の住いの近隣にある埼玉・所沢市(当時は所沢町、柳瀬村)においても、旧陸軍所沢飛行場跡地を含めて開拓が進められました。そのなかでも松郷(松井地区)は、最も規模の大きな開拓地の一つでした。

現在、その地には「松郷開拓の碑」があります。開拓30周年を記念して昭和五十二(1977)年に建てられたものです。
 碑文によると、昭和二十一(1946)年の夏、県から平地林を入植者等に解放するという提案がなされ、防災面等から平地林の伐採に反対する地主との2年以上の話し合いを経て、翌々年十月、入植者30名、地元の増反者150名に対して農用地90ha、防風林用地40ha等を配分することが決定されたとのこと。なお、電気が通ったのは、さらに5年後だったそうです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】地域農政未来塾

全国の町村の連合組織である全国町村会(本部:東京・千代田区永田町)が開講している「地域農政未来塾」は、農業・農村を取り巻く環境が大きく変化するなか、自ら地域の課題に気づき、学び、考え、提案し、そして実行できる町村職員を養成することを目的としています。

6期目となる2022年度は、公募で選ばれた全国からの18名の受講生が参加し、来年2月にかけて計7回の講座やゼミが開かれています。
 塾長は生源寺眞一先生(福島大学教授・食農学類長)。少人数に分かれてのゼミを担当する主任講師は、小田切徳美先生(明治大学農学部教授)、榊田みどりさん(農業ジャーナリスト・明治大学客員教授)、荘林幹太郎先生(学習院女子大学副学長・教授)、中嶋康博先生(東京大学大学院教授)の4名。
 他にも、それぞれの分野での第一人者である30名近くの講師陣による講義も行われます。

私も榊田さんのゼミを少し協力させて頂きましたが、受講生は意欲的な方ばかりでした。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】第11回 経済・財政・金融を読む会

(一社)ピープルズ・プラン研究所(PP研)では、経済・財政・金融の分野で注目される著作の「読書会」を定期的に開催しています。
 7月30日に開催予定の第11回では「食」に関するテキストを取り上げることとなり、僭越ながら、私が報告(解題)させて頂くことになりました。
 ご関心のある方の参加申し込みをお待ちしています。

○ 第11回 … 続きを読む

【オーシャン・カレント】検索マップ「未来を変えるパン」

食料自給率向上のような大きな課題は、国(政治や行政)が取り組むべきもので、自分にできることはせいぜい国産や地元産の食べものを選ぶこと(それはそれで大切なことですが)位しかないと思っている人も多いと思われます。
 しかし、個人の立場で、食料自給率向上に正面から取り組んでいる方もおられます。

その一つが「未来を変えるパン」。
 国産小麦のパンを扱っている全国のパン屋さんの検索マップで、現在、北海道から九州まで121店舗が登録されています。
 フードロス削減や地産地消に配慮しているパン屋さんの新規登録の受け付け、小麦生産者とパン屋さんとの橋渡し等も行っており、また、フォーラムやセミナー、小麦畑ツアー、麦踏み体験会等のイベント情報も掲載されています(「情報ひろば」欄参照。去る6月5日の麦刈りイベントには、私も参加させて頂きました)。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】小農学会オンラインセミナー「フード・マイレージ最前線」

食料の輸送量に輸送距離を乗じたフード・マイレージは、もともとは食料輸送に伴う環境負荷の大きさ(CO2排出量)を把握するために開発された指標ですが、最近のパンデミックやウクライナ危機のなかで、食料の安定供給(安全保障)を考える際のヒントとなるものとしても注目されています。
 以下により、6月17日(金)、小農学会オンライン定期セミナー(zoom)で話題提供させて頂きますので、食料や一次産業に関心のある方のご参加をお待ちしています(参加費無料)。

日時:2022年6月17日(金)19:30〜21:00
  19:30〜 開会、中田からの話題提供「フード・マイレージ最前線」(仮題)… 続きを読む

【オーシャン・カレント】高値が続くたまねぎ

農林水産省は、毎週、小売店における主な野菜価格の動向を調査し公表しています。
 具体的には、キャベツ、ねぎ、レタス、ばれいしょ、たまねぎ、きゅうり、トマト、にんじんの8品目を対象に、毎週1回、各都道府県10店舗の量販店(全国470店舗)を調査員(農林水産省が委託する民間調査機関の調査員)が訪問して調査しているものです。

去る5月24日に発表された最新の調査結果によると、5月16日の週(16〜18日)のたまねぎの小売価格(全国平均)は1kg当たり550円と、前週に比べると5%低下したものの、平年(過去5年平均)の2.2倍という高い水準で推移しています。
 これは、最大の産地である北海道において、昨年夏の干ばつの影響で収穫量が減少したことに加え、後続産地である佐賀など西日本産地においても低温や干ばつの影響で肥大が進んでいないためです。また、作付けを中止した高齢農家等が多かったことも影響しているとも言われています。
 さらに、輸入価格についても、最大の輸入相手国・中国のロックダウンの影響により上昇しています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】若年ママ応援シェルター「おにわ」

昨年(2021)10月1日、沖縄本島中部に若年ママの出産・子育てを応援するシェルター「おにわ」がオープンしました。
 DV等を避けるために一人で赤ちゃんを産んで育てることになった若いママ達(10代の妊娠8か月から赤ちゃんの生後100日までの方)に、出産の前後を過ごす場所を24時間体制で提供する取組みです。
 琉球大学の上間陽子さんと本村真さんが共同代表となり、琉球大学附属病院や助産師さん(寮母さん)がサポートする体制になっているとのこと。

『裸足で逃げる』『海をあげる』等でも知られる上間さんは、風俗業界で働き、暴力を受け、若年出産するなど、凄惨としか言えないような生き方をしている少女たちへのインタビューを続けるなか、調査・研究に留まらず、自ら社会の中に「避難できる場所」をつくる決心をされました。
 その時の思いを、上間さんは、「私の手にあまる。でもつくらないときっとたぶん後悔する。間に合わなかった子たちもいる。それでも動けばなにかは変わる。なにかが変われば、これから間に合うこともあるだろう」とエッセーに記されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】特別講座・著者に尋ねる『フード・マイレージ』

自己PRで恐縮です。
 5月12日(木)19時から、第6回「市民科学特別講座・著者に尋ねる」(NPO市民科学研究室主催)で、拙著『フード・マイレージ[新版]』(2018.1、日本評論社)を取り上げて下さいます(オンライン)。

 当日は、フード・マイレージの概要(定義、計算結果、限界・問題点等)、食生活と地球環境問題との関わり(地産地消の効果)、フード・マイレージの現代的意味(パンデミックや国際紛争に伴う国際物流の混乱、食糧安全保障の重要性等)等について話題提供し、参加者との間で意見交換させて頂く予定です(事前に質問も受け付けています)。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】過去最高値を更新するFAO食料価格指数

−過去最高値を更新するFAO食料価格指数−

FAOのウェブサイトより。https://www.fao.org/worldfoodsituation/foodpricesindex/en/

去る4月8日、国連食糧農業機関(FAO)が公表した2022年3月の世界の食料価格指数(2014〜16年=100)は159.3と、前月の141.4から17.9ポイント(12.6%)上昇し、1990年の集計開始以来、2か月連続で最高値を記録しました。

穀物は前月から17.1%上昇しており、特に紛争のためウクライナとロシアからの輸出が混乱していること等から小麦は19.7%、とうもろこし等の粗粒穀物は20.4%と高騰しています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】農業・農村の多面的機能

農林水産省パンフレットより。https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/pdf/adult_zentai.pdf

農業・農村は、食料の供給だけではない様々な重要な役割を果たしています。
 例えば、水田には雨水を一時的に貯留することで洪水や土砂崩れを防ぐ機能があります。全国の水田に貯留できる水の量は約50億立米(東京ドームの約4千杯)とも言われています。
 さらに、河川の流量安定と地下水の涵養、生物多様性の維持、農村景観の保全、伝統文化の継承、体験学習や教育の場の提供など、様々な役割を果たしているのです。

これらの機能は基本的に貨幣換算できるものではなく、お金で買うこともできないものですが、2001年の日本学術会議の答申によると、洪水防止機能が3兆5千億円、河川流況安定機能が1超5千億円、土砂崩壊防止機能が約5千円、保健休養・やすらぎ機能が2兆4千億円等と試算されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】福島ひまわり里親プロジェクト

2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、福島県の産業や暮らしに大きな打撃を与えました。
 福島県産の農林水産物については、現在は野生の山菜・きのこや鳥獣、川魚など一部を除いて安全が確認されていますが、当時はいわゆる「風評被害」により、例えば福祉作業所でお菓子を詰めていた障がい者の方まで仕事を失ってしまうなど、深刻な状況となりました。
 そこで、全国の人々に“里親”になってもらって、復興のシンボル“ひまわり”を育て、採れた種を返送してもらうことで、福島県における雇用創出、絆づくり(交流イベント「ひまわり甲子園」の開催や絵本の作成など)、搾った油のバスの燃料としての利用、防災教育等につなげる「福島ひまわり里親プロジェクト」が開始されたのです。

これまでのプロジェクトへの参加者は55万人以上、学校は5,900校を超えるとのこと。大震災から11年を経て、プロジェクトは広く全国に浸透しています。

福島ひまわり里親プロジェクト… 続きを読む

【オーシャン・カレント】ウクライナの農業と日本

ウクライナの人口は4,159万人と日本の約3分の1であるのに対して、60.4万平方キロメートルと日本の約1.6倍の国土面積を有しており、しかもその約7割が農用地です(日本は約1割)。
 気候が温暖なこともあり、ウクライナは古くから「ヨーロッパの穀倉」「ヨーロッパのパンかご」と呼ばれるほど農業の盛んな国です。主要農産物は小麦、とうもろこし、ばれいしょ、ひまわりの種、てん菜などで、二色からなるウクライナの国旗は青い空と黄金の麦畑を表しているともされています。
 なお、国内総生産(GDP) に占める農林水産業のシェアは約10%と、日本の1%と比べて大きなものとなっています。

2021年における日本のウクライナからの輸入額は798億円ですが、その半分以上をたばこが占めています。ウクライナにはJT(日本たばこ産業)の工場があり日本向けの製品等を生産していますが、現在は操業が停止されているようです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】農業をはじめる.JP

「農業をはじめる.JP」は、新規就農を目指す人のためのポータルサイトで、農林水産省の補助事業により(一社)全国農業会議所が運営しています。
 https://www.be-farmer.jp/

全国農業会議所とは、全国の市町村で農地の権利移動や転用の許認可等の業務を担っている農業委員会の全国系統組織で、全国新規就農支援センター(相談窓口など)の運営も担っています。

「農業をはじめる.JP」では、職業としての農業に興味を持たれた方や農業を仕事にしたいと考え始めた方が、就農に向けて具体的なアクションを起こしていくために役立つ情報を、分かりやすく、一元的に提供しています。[就農を知る][体験する][相談する][研修/学ぶ][求人情報][支援情報]に分類され、必要な情報にアクセスしやすいように工夫されています。
 また、全国及び各県の新規就農相談センターで行われている相談会や個別の相談業務(対面、オンライン、メール、電話等)、就農イベント(新・農業人フェア)に関する情報も掲載されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】伝統工芸品・亀田縞(新潟)

もんぺ製作所HPより https://monpeseisakusho.com/

亀田縞は、新潟・亀田郷において300年以上にわたり育まれてきた伝統織物です。
 現在の新潟市中央部に位置する亀田郷は、越後平野を流れる信濃川や阿賀野川に囲まれた広大な低湿地帯で、第二次世界大戦後に土地改良事業(排水事業)が実施される以前は、舟を使って腰まで水に浸かりながらという過酷な稲作が営まれていました。その様子は司馬遼太郎『潟のみち』にも描かれています。

その亀田郷での農作業や暮らしの中で、泥や水に強い綿織物として生み出された亀田縞ですが、戦後、海外からの安価な繊維製品の輸入が増加するなかで、いったんほとんど姿を消してしまいました。しかし平成の時代に入り、技術を守り続けてきた地元の方たちの尽力によって復活したのです。… 続きを読む