【メルマガ】F.M.Letter No.182

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.182◇
 2019年12月11日(水)[和暦 霜月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  依然として低い木材自給率
◆ O.カレント  (一社)マチモノ
◆ ほんのさわり 田中淳夫『森と日本人の1500年』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 時候は二十四節気の大雪(たいせつ)。
 北日本や日本海側からは大雪の便りが届いています。気が付くと令和元年(2019年)も押し詰まってきました。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は木と森にフォーカスしました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/

-依然として低い木材自給率-

1950年代には100%近くあった日本の木材自給率は、その後、国産材供給の減少と木材輸入の増加により大きく低下し、2002年には過去最低の18.8%にまで低下しました(リンク先の図182)
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/12/182_mokuzai.pdf

 その後は、木材自給率は上昇傾向で推移しています。
 これは、国産材については、人工林資源の充実や、技術革新による合板原料として利用されるようになったことから、供給量が増加傾向で推移した一方、輸入量が大きく減少したためです。
 木材輸入量が大きく減少した背景には、ロシアの丸太輸出税の大幅引上げ、マレーシア及びインドネシアの違法伐採対策等があります。
 これらの結果、2017年における木材自給率は36.2%まで上昇しました。それでも、森林大国であるはずの日本は、木材の6割以上を輸入に依存しているのです。

 また、木材自給率を用途別にみると、製材用材は47.9%、合板用材は38.6%となっているのに対し、パルプ・チップ用材は16.1%と低い水準にとどまっています。
 都市部を含めた森林資源の有効活用が望まれます。

[出典等]
 農林水産省「平成30年度 森林・林業白書」第1部第4章2、「参考統計表」
  http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/30hakusyo/index.html

◆ オーシャン・カレント-潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/

-(一社)マチモノ-

貴重な森林資源は都市部にもあります。
 それに着目してユニークな活動をしているのが、(一社)街の木ものづくりネットワーク(マチモノ)です。

 マチモノのミッションは、街のなかにある木を、身近な自然から得られる恵み(資源)として意識し、学び、有効活用することを通じて、街に住む私たちの生活をもっと楽しく、もっと豊かにすること。
 街では、日々、多くの木(庭木、街路樹、公園木等)が伐られています。伐採された木のなかには、チップ化など現状の処分方法以外にも木材として活用できるものもあり、これでは資源としてもったいないだけではなく、共に生きてきた街の木の思い出が人々の記憶から完全に喪われることにもなります。

 そこでマチモノは、前身の任意団体の頃から、街の木と、その周りで暮す人々との多様なチャンネルづくりのための様々な取組みを始めました。
 例えば「製材ワークショップ」。
 伐採された木を、昔の大きなノコギリやかんなを使ってみんなで製材する体験会で、保育園等でも実施しています。
 また、製材した街の木を、暮らしのなかで使う各種木工品(食器、雑貨、家具等)に生まれ変わらせるワークショップも。
 なお、マチモノの代表は街の木(都市森林)のあり方を問い直す都市森林株式会社という会社を経営する方で、森や木についての豊富な専門知識と技術をお持ちです。  さらに、街の木(緑地)の勉強会やカルテ作り、木の実など街の木の恵みを頂く収穫祭(本年は12月14日の予定)等も開催しています。

 事務局長のヨコヤマメグミさんは、次のように話されています。
 「身近な自然の豊かさを発見する感動・楽しさを、もっと多くの人と共有したい。街の木を活かした緑いっぱいの楽しい街を、ぜひ一緒に創っていきましょう」。

[参考]
フェイスブックページ
 https://www.facebook.com/Machimono/
都市森林プロジェクト
 https://www.toshiringyou.com/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

-田中淳夫『森と日本人の1500年』(2014.10、平凡社新書)-
 https://www.heibonsha.co.jp/book/b183467.html

先日、皇居に大嘗宮(だいじょうきゅう)を見学してきました。悠紀殿(ゆきでん)・主基殿(すきでん)はじめ全ての殿舎は見事な木造。
 このことに触発されて、森や木と暮らしてきた日本人の伝統を知りたいと思って手に取った本書ですが、期待は(いい意味で)裏切られました。

 著者は大阪・生駒山麓に生まれ、静岡大・林学科を卒業し出版社、新聞社を経て、現在は森林ジャーナリストとして活躍中の方。

 著者によると、森の風景は時代とともに、あるいは人間との関わりの中で激変しているとのこと。
 例えば、一斉に散る桜や鎮守の森を「日本の原風景」とするのは「嘘」。ソメイヨシノが全国に広がったのは明治から大正にかけてであり、京都の八坂神社や鴨川神社の境内林の植生も過去とは大きく変わっているそうです。
 明治時代には、幕府や藩による規制が取り払われたこともあって野放図な伐採が進み、禿(はげ)山が広がっていったとのこと。
 さらに第二次大戦後には復興等のために急拡大する木材需要に対応するため、森林の大増伐と外材輸入の完全自由化政策に踏み切り、結果として日本の林業は衰退し現代に至っているというのです。

 著者は述べます。
 「自然と共生する日本人といった論説には強い違和感が湧き上がる。かつての生態系を活かした農林業(焼畑や林間放牧など)は廃れてしまった。一方、現代のヨーロッパでは、自然と対立せず多様性を重んじる思想が広がっている。
 果たして日本人とヨーロッパ人のどちらが、本気で自然と共生しようとしているだろうか」

 そこで著者が提唱するのは、「美しい森づくり」。
 「必要なのは誇りの持てる森を維持すること。そして都市の住民も森に関心を持ち続けること。川下と川上の人々の思いが十分に連携した時、初めて美しい森はもっとも収益を上げるだろう」

 森づくりの方向に留まらず、今後の日本社会の指針をも示唆する好著です。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

 ▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 共感資本社会を生きる[11/29]
 https://food-mileage.jp/2019/11/29/blog-234/

○ 浜通りの農家を巡るスタディツアー2019(1)(2)[12/1,2]
 https://food-mileage.jp/2019/12/01/blog-235/
 https://food-mileage.jp/2019/12/02/blog-236/

○ 第9回マチモノ樹木勉強会[12/4]
 https://food-mileage.jp/2019/12/04/blog-237/

○ 車座座談会 vol.687[12/9]
 https://food-mileage.jp/2019/12/09/blog-238/

 ▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 広野町に「賑わい」と「生業」を取り戻す
 -みんなが集まる場所づくり「ちゃのまプロジェクト」の挑戦
 日時:12月12日(木)19:00~21:00
 場所:3331 Arts Chiyoda(東京・外神田6)
 主催:Fw:東北 Fan Meeting
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/2392553314207447/

○ マチモノ秋の収穫祭
 日時:12月14日(土)10:00~21:00
 場所:生活工房(東京・世田谷区太子堂4)
 主催:街の木ものづくりネットワーク(マチモノ)
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/698095544005545/

○ ミシュカの森2019 Part2
 「分人主義と今~悲しみとともにどう生きるか」
 日時:12月14日(土)13:00~17:30
 場所:ビジョンセンター田町(東京・港区芝5)
 主催:ミシュカの森
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/mforest/posts/2494802767252018

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*米令寺忽々のコツコツ小咄。
「この季節、お酒は絶ってるの」
「そうなんですか」
「錦秋(禁酒)の候ですから」
 今年は紅葉も遅く、錦秋ならぬ錦冬の季節ですが。

 コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.183は12月26日(水)[和暦 師走朔日]、今年最後の配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
 http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】
 発行者:中田哲也

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